タテハチョウ科のヒメアカタテハはオーストラリアと南米を除く全世界に生息しており、おそらく最も広く世界中に分布している蝶と考えられます。英名の Painted Lady という優雅な名前のとおり、オレンジ色と黒色の模様に白色の斑紋が混ざり小型ながら華麗な蝶です。それにしても Painted Lady とはうまく命名したものだと思います。 ヒメアカタテハの有名な習性に渡りがあります。春になると何百万匹ものヒメアカタテハが、いくつもの移動ルートを通って世界中に散らばっていきます。飛翔力が強く1,000km前後まで飛ぶことが観察されています。移動は広範囲ですが片道移動に限られており、成虫は繁殖を終えると死滅します。したがって帰りの移動は子孫が行うことになりますが、繁殖は移動ルートの最終地で行われるわけではなく、移動ルートの途中で繁殖することが観察されており、帰りの移動は必ずしも長距離になるわけではありません。最も有名な移動ルートとして、北アフリカからアルプスを越えて北ヨーロッパまで移動するルートが知られています。 |
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1966.4.21 アルバニア |
1969.4.15 ハンガリー |
1973.9.3 レソト |
1974.3.6 イラン |
1974.9.11 リベリア |
1975.10.30 アンティグア |
1976.12.15 アファール・イッサ |
1977.6.27 ジブチ |
1978.11.20 バーブダ |
1978.4.6 セントビンセント |
1982.3.24 グレナダ領グレナディーン諸島 |
1984.1.20 レソト |
1986.9.15 ベニン |
1988.2.15 ケニア |
1989.?.? シリア |
1991.11.16 ポーランド |
オーストラリアと南米には V. cardui と近縁の V. kershawi と V. carye が生息しています。この種をヒメアカタテハの亜種として分類する人もいます。オーストラリアでは1951年頃から南西部のごく一部で V. cardui が見られていましたが、1992年以降は記録がなくなっています。V. carye はアンデスからウルグアイ、パラグアイなどにかけて分布しています。(情報提供:坂神泰輔さん) |
ミナミヒメアカタテハ |
ヒメアカタテハの一種 |
1977.7.5 ノーフォーク島 |
1973.9.3 フォークランド諸島 |