シロチョウ科のヤマキチョウは、ヨーロッパからアジアの温帯域、そして日本にかけて分布しています。北ヨーロッパには普通に見られ、とくに英国南部では庭にも飛んできますが、本来は森林とその周辺を住みかとする蝶です。日本では東北地方北部と中部地方に分布しています。 英名の Brimstone とは「硫黄」を意味する古い言葉で、その言葉通り翅全体がやや白っぽい黄色に覆われています。雌の翅の色は雄と違いやや緑色を帯びた白っぽい色をしており、雄と容易に識別できます。幼虫の食草はクロウメモドキ類であり、学名の rhamni はギリシア語でクロウメモドキのことです。 |
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1958.4.23 トルコ |
1961.11.27 チェコスロバキア |
1963.9.29 アルバニア |
1963.11.7 モンゴル |
1981.8.20 アルジェリア |
1985.4.11 アイルランド |
1995.9.25 アンドラ |
ヤマキチョウは数多い蝶の仲間でも寿命の長い蝶として知られています。初夏に成虫となったのち、真夏には姿を隠し、秋に再び活動して冬はひっそりと隠れてしまいます。早春に冬眠からさめて雌は次世代の卵をうみつけます。実に成虫で9〜10ヶ月ものあいだ存在していることになります。モンシロチョウが成虫でいる期間が約10日間であることを考えると、ヤマキチョウはとんでもなく長寿の蝶であるといえます。 ところでチェコではこの蝶を「六つの紋のあるキチョウ」と呼んでいますが、前後翅の小さなオレンジ色の斑紋は合計4つしかなく、「六つの紋」に合っていません。したがって、翅の中央の紋ではなく、翅の縁に並ぶ淡いオレンジ色の紋からこの呼び名がついたのではないかと思われます。 |