シジミチョウは小型の蝶で、非常に種類が多く世界中で約6,000種近くもいます。多くの幼虫はワラジのような形をしていて背中に甘い分泌物を出す蜜線があり、アリが好んで嘗めに集まります。一部のシジミチョウではアリが幼虫を巣の中に運び入れ、アリは蜜を嘗めるかわりに幼虫に餌を与え外敵から守るという生物界でいう共生という関係を作ります。 アリオンゴマシジミは英語で Large Blue と呼ばれるように、ヨーロッパにいるアリと共生する数種のシジミチョウの中でももっとも大型の種類です。ヨーロッパからシベリアを経て中国まで広く分布しています。ヨーロッパでは2,000m以上の山地の南斜面やスカンジナビアの北部に多く見られますが、イギリスでは1979年以降ほぼ絶滅してしまいました。イギリスから1981年に発行された蝶切手には、このアリオンゴマシジミの美しい姿が描かれています。 |
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1967.10.14 ポーランド ♀ |
1969.4.15 ハンガリー ♀ |
1977.4.1 ジブラルタル ♂ |
1981.5.13 イギリス ♂ |
1993.3.11 デンマーク |
アリオンゴマシジミの幼虫は、アリの巣の中でアリから餌をもらうのではなく、アリの幼虫を食べて成長します。こうなるともはやお互いに利益を相互供与するのではないから、共生とはいえないと言う説もあります。雄と雌はよく似ていますが、雌の方がやや大きく翅の縁どりの幅が広くなっています。 アリオンゴマシジミの「arion」という種名は、古代ギリシアの半伝説的な吟遊詩人の名にちなんでいます。詩人アリオンは歌手として優れ、あるとき船旅の途上、海賊に全財産を奪われたため悲歌を歌ったのち竪琴を抱いて海に身を投げましたが、美しい歌声に惹かれて泳いできたイルカに助けられ無事コリントに上陸できました。そして国王の歓待を受けたといいます。 |