ユーゴスラビア Yugoslavia

旧ユーゴスラビアから1964年に発行された蝶と蛾を描く切手です。ヨーロッパに普遍的に見られるオーソドックスな種が選択されていますが、デザインが多少デフォルメされ、翅脈を強調した幾何学的な表現は特徴的です。とくにアポロウスバシロチョウの表現が際立っています。個人的にはあまり好みではありませんが、写実的な図鑑表現とは一線を画しており、オリジナリティのあるデザインは好感が持てます。

ところで、旧ユーゴスラビアは民族対立の内戦を経て、スロベニア、クロアチア、ボスニア=ヘルツェゴビナ、マケドニア、そして、セルビアとモンテネグロの連邦共和制国家であるユーゴスラビア連邦共和国の5カ国に分裂してしまいました。


1964.5.25 蝶蛾切手

クジャクチョウ
Inachis io
(タテハチョウ科)
キベリタテハ
Nymphalis antiopa
(タテハチョウ科)
キョウチクトウスズメ
Daphnis nerii
(スズメガ科)

アポロウスバシロチョウ
Parnassius apollo
(アゲハチョウ科)
オオクジャクヤママユ
Saturnia pyri ♂
(ヤママユガ科)
キアゲハ
Papilio machaon
(アゲハチョウ科)


キョウチクトウスズメは、スズメガ科の中でももっとも派手な種の一つで、紫味を帯びたピンク色と緑色の濃淡からなる複雑な模様を持っています。アフリカ、アジア南部に分布しますが、ヨーロッパに向けて移動します。オオクジャクヤママユは、ヨーロッパ産の中では最大の蛾であり、ファーブル昆虫記の中にも出てくることで有名です。詳しくはモナコから発行された「ファーブル生誕150年記念」の切手をご覧ください。


最初の蝶切手の発行からちょうど10年後の1974年に3種の青年の日の切手が発行されましたが、そのうちの1種に蝶が描かれました。残り2種は鳥とバラの花です。描かれた蝶は日本をはじめ全世界に分布するモンシロチョウよりもやや大型のオオモンシロチョウです。スイスの児童福祉切手(1956年)にも描かれています。オオモンシロチョウはヨーロッパに分布するごく普通の種類で、親指姫の物語にも出てくる白い大きな蝶はこのオオモンシロチョウと考えられています。モンシロチョウと同じように幼虫はキャベツの葉を食べ尽くしてしまうため害虫として有名です。


1974.5.25 青年の日

オオモンシロチョウ
Pieris brassicae
(シロチョウ科)


さらに12年後の1986年に4種の蝶蛾切手が発行されました。描かれているのはいずれもお馴染みの種類ばかりですが、写真をもとにデザインされているようで、花や川原などにとまっているような感じで写実的に描かれているのが目新しく映ります。


1986.5.26 蝶蛾切手

ヒメクジャクヤママユ
Saturnia pavonia
(ヤママユガ科)
クジャクチョウ
Inachis io
(タテハチョウ科)

アポロウスバシロチョウ
Parnassius apollo
(アゲハチョウ科)
チョウセンコムラサキ
Apatura iris
(タテハチョウ科)



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