スリナムは南米ベネズエラの東側、ギアナ三国の真ん中に位置します。1975年にスリナム共和国として独立しましたが、この切手が発行された1972年はまだオランダ領でした。ギアナ三国の西側は元英領ギアナ、現在のガイアナ協同共和国(1966年独立)で、東側は現在もフランス領ギアナとして植民地支配が続いています。 そのスリナムから1972年に発行された通常切手は11種の蝶と2種の蛾を題材にした素晴らしいロングセットになっています。 |
1972.7.26 通常切手
Eucyana bicolor (ヒトリガ科) |
ミツオシジミタテハ Helicopis cupido ♂ (シジミタテハ科) |
タスキアゲハ Papilio thoas (アゲハチョウ科) |
ナンベイアオツバメガ Urania leilus (ツバメガ科) |
Stalachtis calliope (シジミタテハ科) |
ホソバシジミタテハ Stalachtis phlegia (シジミタテハ科) |
ミドリタテハ Siproeta stelenes (タテハチョウ科) |
Parides neophilus (アゲハチョウ科) |
ベニオビタテハ Anartia amathea (タテハチョウ科) |
ウスアオイチモンジ Adelpha cytherea (タテハチョウ科) |
ドリスドクチョウ Heliconius doris (ドクチョウ科) |
アケボノタテハ Nessaea obrinus ♂ (タテハチョウ科) |
コケイロカスリタテハ Hamadryas feronia (タテハチョウ科) |
キマダラホソバシジミタテハは、南米のいくつもの科に渡って擬態することで有名なキマダラ模様のグループのシジミタテハ科の一種です。このグループには、アゲハチョウ科、シロチョウ科、ドクチョウ科、マダラチョウ科の種が入っており、ドクチョウ科とマダラチョウ科の種には毒がありますが、他の科は無毒です。 |
1977年に額面を変更した5種の加刷切手が発行されました。 |
1977.9.15 通常切手(加刷)
タスキアゲハ Papilio thoas (アゲハチョウ科) |
Eucyana bicolor (ヒトリガ科) |
ナンベイアオツバメガ Urania leilus (ツバメガ科) |
ホソバシジミタテハ Stalachtis phlegia (シジミタテハ科) |
コケイロカスリタテハ Hamadryas feronia (タテハチョウ科) |
1983年にメリアンという女性画家が描いた蝶と蛾の切手が発行されました。ヨーロッパではルネッサンス以来、蝶などの昆虫を採集してスケッチしたり、蝶の画を本の装丁に使ったりすることが流行するようになりました。マリア・シビレ・メリアン(1647年〜1717年)はドイツ生まれで、蝶や蛾の幼虫を飼育して羽化させ、その変態の有様を精密に写生し、「青虫変態図集」(1879年)や、「スリナム昆虫変態図集」(1705年)という彩色銅版画を出版しました。 彼女はスリナムで3年間を昆虫の観察と精密画の制作に集中しました。「スリナム昆虫変態図集」の特徴は、各々の蝶と蛾の卵から成虫までの生活史を一枚の絵に描いていることで、繊細なタッチと女性特有の柔らかくロマンチックな雰囲気に仕上がっています。切手に描かれているのは成虫の部分だけで、幼虫や蛹はほとんど除外されています。しかしながら、原画の持つ優しい雰囲気は十分に伝わっていると思います。標本をもとにした蝶蛾切手とひと味違った作品をお楽しみ下さい。 |
1983.9.14 メリアンが描いた蝶・蛾
ベニモンクロアゲハ Papilio anchisiades (アゲハチョウ科) |
ナンベイアオツバメガ Urania leilus (ツバメガ科) |
ディダミアモルフォ Morpho deidamia (モルフォチョウ科) |
ナンベイオオヤガ Thysania agrippina (ヤガ科) |
モルフォチョウの一種 Morpho telemachus (モルフォチョウ科) |
アサギドクチョウ Philaethria dido (ドクチョウ科) |
メネラウスモルフォ Morpho menelaus (モルフォチョウ科) |
スズメガの一種 Manduca rustica (スズメガ科) |
ロスチャイルドヤママユの一種 Rothschildia sp. (ヤママユガ科) |
ワタリオオキチョウ Stalachtis phlegia (シロチョウ科) |
フトオビアゲハ Hamadryas feronia (アゲハチョウ科) |
スズメガの一種 Eumorpha vitis (スズメガ科) |