北朝鮮 Democratic People's Republic of Korea

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)からは、1962年に最初の蝶切手が発行されました。日本でもお馴染みのヒメギフチョウ、ホソオチョウ、クジャクチョウと、朝鮮半島北部から中国北部を経てアムール河流域にかけて生息するオオアカボシウスバシロチョウを描く4種です。デザイン、印刷、紙質のいずれをとっても、あまり出来がよいとは決して言えません。しかしながら、アフリカ諸国などが旧宗主国などの力を借りて美麗な蝶切手を発行していたのと比較しても、1962年という蝶切手としては比較的早い時期に、とにもかくにも自国から発行したという熱意には好感が持ています。この点、エクアドルの1970年以降の通常切手シリーズと似た風情があります。


1962.3.13 蝶切手

ヒメギフチョウ
Luehdorfia puziloi
(アゲハチョウ科)
ホソオチョウ
Sericinus telamon
(アゲハチョウ科)

オオアカボシウスバシロチョウ
Parnassius nomion
(アゲハチョウ科)
クジャクチョウ
Inachis io
(タテハチョウ科)


ヒメギフチョウとホソオチョウはお隣の韓国の蝶切手にも登場しています。ヒメギフチョウの近縁のギフチョウは、1980年に京都で開かれた第16回国際昆虫学会議の記念切手に描かれています。オオアカボシウスバシロチョウは中国の蝶切手にも登場しています。


1965年に絹の原料となる3種の蚕を描いた単色刷の切手が発行されました。カイコガとヤママユガ科のエリサンとサクサンの3種です。絹糸の原料となる絹糸虫は家蚕と野蚕に大別されています。カイコガは屋内で飼育されるところから家蚕と呼ばれ、数千年の昔から飼い馴らされてきました。現在、生糸を生産するため五十か国余りで養蚕が行なわれています。

家蚕以外の絹糸虫は野生の蚕で、樹上にネットを張って天敵から守ったり、卵を採取したり、飼育時期をコントロールするなど多少の保護はしますが、野外に放し飼いにし自然のままに繭を作らせ、それを集めて糸の原料とします。このように屋外で飼育することから野蚕と総称します。野蚕は、大部分がヤママユガ科に属しています。糸のはぐれ具合が悪く吐糸能力も低いことから、飼育される種類は少ないのですが、家蚕糸と同様古い時代から実用に供され、現在主として中国、インド、朝鮮および日本で利用されています。


1965.12.30 蚕蛾

カイコガ(繭、成虫)
Bombyx mori
(カイコガ科)
エリサン(繭、成虫)
Philosamia cynthia
(ヤママユガ科)
サクサン(繭、成虫)
Antheraea pernyi
(ヤママユガ科)


エリサンはインド、アッサムの原産で、ヒマを好んで食べることから「ヒマサン」とも呼ばれます。非常にじょうぶな絹を作り、中国で多く飼育されています。繭は白色、橙黄色、ピンク、赤褐色などさまざまで、繭の層が綿状で柔らかくふかふかしており、簡単に糸を繰りとることができないので、綿やウールのように主として紡績原料になります。サクサン(柞蚕)は中国が原産で日本、朝鮮、インド産などがあり、タッサーと総称されています。主として中国とインドで飼育されており、家蚕に次ぐ絹材料で、その糸は正しくは「さく蚕糸」また「タッサーシルク」と呼ばれます。エリサン、サクサンともに通常「野蚕糸」として取引され価格は安価です。(出典:社団法人日本絹業協会)



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