エクアドル Ecuador

スペイン語で「赤道」を意味する国名を持つエクアドルは、その名の通り赤道直下の南米の1国です。赤道直下に位置するため、メルカトール図法のような地図で見るとコロンビアとペルーに挟まれた小さな国のように見えますが、面積は日本の約4分の3と決して小さな国ではありません。1961年の最初の蝶をモチーフとした通常切手を発行して以来、この国では長い間蝶を描いた通常切手が使用されています。


1961.7.13 通常切手

ヘリコニウスタイマイ
Eurytides pausanias
(アゲハチョウ科)
マルバネキオビアゲハ
Papilio torquatus ♂
(アゲハチョウ科)
モロプスオナガタイマイ
Eurytides molops
(アゲハチョウ科)
リキダスアオジャコウアゲハ
Battus lycidas
(アゲハチョウ科)


1961年の4種の通常切手のうち、3種については1964年に同一図案で改色された切手が発行されました。用紙も普通紙から燐光紙に変わっています。実は、改色されなかった30ctvsの切手も燐光紙で発行されているのですが、外観上の違いはないため別種の切手とは扱っていません。


1964 通常切手

1964.6 1964.9
リキダスアオジャコウアゲハ
Battus lycidas
(アゲハチョウ科)
ヘリコニウスタイマイ
Eurytides pausanias
(アゲハチョウ科)
モロプスオナガタイマイ
Eurytides molops
(アゲハチョウ科)


描かれている蝶はいずれもアゲハチョウ科であり、エクアドルに生息する特色ある種が選ばれています。切手の発行目的そのものは通常切手であり好ましいのですが、蝶の姿が少し金属質に描かれていることや、とくに改色シリーズでは色も意図的に変えられており、写実性に問題があるのが残念です。背景の色合いなどは落ち着いていて飽きがこないだけに惜しい感じがします。


1970年に再び蝶を描いた10種の通常切手が発行されました。前回のシリーズと大きさはほぼ同じなのですが、デザインや印刷が稚拙になっています。おそらく前回は外国に印刷を依頼していたものを今回は自国で製作したためと思われます。そういう意味では稚拙であっても好感が持てます。選ばれている蝶も自国の特色ある種類が選ばれています。

オオベニオビシロチョウは、シロチョウ科に属するにもかかわらず黒色をしている南アメリカにだけ生息する約10種からなるグループの1種です。開張が6-7cmと大型で前翅の赤い帯と後翅の青灰色の斑紋が特徴です。


1970 通常切手

1970.1
オオベニオビシロチョウ
Pereute leucodrosime
(シロチョウ科)
アサギドクチョウ
Philaethria dido
(ドクチョウ科)
キプリスモルフォ
Morpho cypris ♂
(モルフォチョウ科)
ペレイデスモルフォ
Morpho peleides
(モルフォチョウ科)

1970.3 1970.4
キベリウズマキタテハ
Callicore codomannus
(タテハチョウ科)
ベニオビタテハ
Anartia amathea
(タテハチョウ科)
アカスジドクチョウ
Heliconius erato
(ドクチョウ科)
ヘリコニウスタイマイ
Eurytides pausanias
(アゲハチョウ科)

1970.7
ウラミドリシジミ
Evenus coronata ♂
(シジミチョウ科)
キマダラマルバネアゲハ
Papilio zagreus
(アゲハチョウ科)


1970年の後半には1970年前半の10種とまったく同じデザインで背景色を省略したシリーズが発行されました。1961年の通常切手以来、エクアドルでは蝶を描いた通常切手が長く使用されており、派手さはありませんが実用的な蝶切手の発行国として好感が持てます。いかにも手作りといった感じのこのシリーズは、好きな蝶切手の一つです。


1970 通常切手

1970.8
ベニオビタテハ
Anartia amathea
(タテハチョウ科)
キプリスモルフォ
Morpho cypris ♂
(モルフォチョウ科)

1970.9
ウラミドリシジミ
Evenus coronata ♂
(シジミチョウ科)
キマダラマルバネアゲハ
Papilio zagreus
(アゲハチョウ科)
アカスジドクチョウ
Heliconius erato
(ドクチョウ科)
ヘリコニウスタイマイ
Eurytides pausanias
(アゲハチョウ科)

オオベニオビシロチョウ
Pereute leucodrosime
(シロチョウ科)
アサギドクチョウ
Philaethria dido
(ドクチョウ科)
キベリウズマキタテハ
Callicore codomannus
(タテハチョウ科)
ペレイデスモルフォ
Morpho peleides
(モルフォチョウ科)


南米に生息する空飛ぶ宝石ともいわれるモルフォチョウが2種描かれていますが、キプリスモルフォ、ペレイデスモルフォともに中南米に広く分布する代表的なモルフォチョウです。とくにキプリスモルフォはもっとも青色の輝きが強い種類で、前翅から後翅にかけての白い帯が趣を添えています。ペレイデスモルフォの翅の裏面は青く輝く表面とは正反対に、地味な褐色でフクロウチョウのような目玉模様がずらっと並んでいます。



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