日本 Japan(昆虫切手)

日本の蝶と蛾以外の昆虫を描いた切手を集めました。最初の昆虫切手は1971年に発行されたカブトムシを描く12円の通常切手です。12円という額面のこの切手は、当時の第三種郵便(定期刊行物の郵送用)用として発行されました。カブトムシは北海道をのぞく日本全国に分布し、台湾、中国、インドまで広く生息します。


1971.7.15 通常切手

カブトムシ
Allomyrina dichotoma ♂
(コガネムシ科)


1974年から1978年にかけて自然保護シリーズが5回に分けて発行されました。哺乳類、鳥類、は虫類・両生類・魚類のあと、第4集として昆虫が選ばれました。1種がミカドアゲハで残りの3種が以下のとおりです。なお、第5集は植物です。

ゲンジボタルは、体長12〜18mm程度の日本では最大でかつ日本固有のホタルです。本州、四国、九州の各地に分布しますが、農薬使用や水路汚染などの影響でその生息地が減少しています。滋賀県山東町の「長岡のゲンジボタルおよびその発生地」が特別天然記念物に指定されています。


自然保護シリーズ

1977.7.22

1977.8.15

1977.9.14

ゲンジボタル
Luciola cruciata
(ホタル科)
ヒメハルゼミ
Euterpnosia chibensis
(セミ科)
シマアカネ
Boninthemis insularis
(トンボ科)


ヒメハルゼミは、体長約3cmの小型で翅が透明のセミです。南方系のセミで、東北をのぞく本州、四国、九州のほか、屋久島、奄美大島、沖縄に生息します。合唱性があり椎や樫などの林で一斉に鳴くのが観察できます。新潟県能生町の「能生ヒメハルゼミ発生地」、茨城県笠間市の「片庭ヒメハルゼミ発生地」、千葉県茂原市の「鶴枝ヒメハルゼミ発生地」が天然記念物に指定されています。

シマアカネは、体長約40mm、翅の長さ約30mmの細身で中型のトンボです。腹部の赤い色が特徴の小笠原諸島に固有の種類です。父島、母島、向島で5月から8月にかけて発生します。1969年に天然記念物に指定されました。


1985年10月10日から16日まで、名古屋市公会堂で開催された第30回国際養蜂会議を記念してミツバチを描いた記念切手が発行されました。この国際会議には、65か国から3、400人(国内2、200人、海外1、200人)が参加しました。情報交換と養蜂産業の安定的発展について協議が行われました。養蜂産業は、はちみつやローヤルゼリーなどの生産の他、ミツバチによる花粉交配による果樹・牧草などの増産にも役立っています。世界的に見てもミツバチやミツバチの巣、さらに養蜂業を描いた切手は数多く発行されています。


1985.10.9 第30回国際養蜂会議

ヨーロッパミツバチ
Apis mellifera
(ミツバチ科)


1986年の昆虫シリーズには、15種の昆虫(蝶と蛾を除く)が描かれました。甲虫類が一番多く7種、次いでトンボ類が5種、カメムシ、セミ、ツノトンボが各1種となっています。日本特産種(ミヤマカワトンボなど)、最近の新種(ヤンバルテナガコガネなど)、日本古来の代表種(オニヤンマなど)など、バラエティに富んだ好感の持てる種の選択ではないかと思います。外国では蝶と蛾を含めた昆虫全体のシリーズというのは比較的少なく、蝶と蛾に偏らない昆虫全体をまとめたシリーズは稀少です。ただ、バッタ類とアリを含むハチ類が1種も含まれていないのが残念です。


昆虫シリーズ

第1集 1986.7.30

アカスジキンカメムシ
Poecilocoris lewisi
(カメムシ科)
ルリボシカミキリ
Rosalia batesi
(カミキリムシ科)
ムカシトンボ
Epiophlebia superstes
(ムカシトンボ科)

第2集 1986.9.26

オオクワガタ
Dorcus hopei ♂
(クワガタムシ科)
ミヤマアカネ
Sympetrum pedemontanum
♂♀
(トンボ科)
マイマイカブリ
Damaster blaptoides
(オサムシ科)

第3集 1986.11.21

ベッコウチョウトンボ
Rhyothemis variegata
(トンボ科)
エゾゼミ
Tibicen japonicus
(セミ科)
オガサワラタマムシ
Chrysochroa holstii
(タマムシ科)

第4集 1987.1.23

ミヤマクワガタ
Lucanus maculifemoratus
(クワガタムシ科)
オニヤンマ
Anotogaster sieboldii
(オニヤンマ科)
ヤンバルテナガコガネ
Cheirotonus jambar ♂
(コガネムシ科)

第5集 1987.3.12

ミヤマカワトンボ
Calopteryx cornelia ♂
(カワトンボ科)
キバネツノトンボ
Ascalaphus ramburi ♂
(ツノトンボ科)
ヒゲコガネ
Polyphylla laticollis ♂
(コガネムシ科)


日本の通常切手の図案も1992年から統一されつつありますが、低額面の切手には昆虫の図案が使われています。1994年に葉書と封書の料金が、41円から50円、62円から80円とそれぞれ値上げになり、その値上げ分を貼り足すための額面として、9円のシオカラトンボ、18円のテントウムシの切手が発行されました。

1997年11月にはさらに3種の昆虫を描いた切手が通常切手シリーズに仲間入りしました。10円のコアオハナムグリ、20円のニホンミツバチ、そして30円のベニシジミ(蝶)です。


通常切手

1994.1.131997.11.28
シオカラトンボ
Orthetrum albistylum
(トンボ科)
テントウムシ
Harmonia axyrids
(テントウムシ科)
コアオハナムグリ
Oxycetonia jucunda
(コガネムシ科)
ニホンミツバチ
Apis cerana
(ミツバチ科)


シオカラトンボは誰でも目にしたことがある普通種ですが、雌の成虫の体色は黄褐色で雄と明らかに違いがあります。雌のシオカラトンボを私はその体色から麦藁トンボと呼んでいましたが、これは一般的なんでしょうか。

テントウムシはナミテントウとも呼ばれており、色彩と斑紋は別種ではないかと思うくらい、大きなな変化があります。幼虫・成虫ともにアブラムシを捕食する益虫です。コアオハナムグリは体長が11〜16mmのやや小型のハナムグリで、バラ、ハギ、ボケなどの闊葉樹に集まり花を食べます。

ニホンミツバチは在来種のミツバチで、養蜂で飼育されているミツバチは、第30回国際養蜂会議の切手に描かれたヨーロッパミツバチです(ヨウシュミツバチとも呼ばれる)。ニホンミツバチの方が後翅が短く体色も黒く簡単に見分けられます。日本全国の山野に普通に見られます。


1998年に10円のコアオハナムグリを描くコイル切手が発行されました。発表と発行までの期間が短かったことや、旧図案のフクジュソウを描く10円コイル切手の在庫がなくなるまで自販機では発売されなかったことから、入手に苦労された方も多かったようです。


1998.9.11 通常切手(コイル)

コアオハナムグリ
Oxycetonia jucunda
(コガネムシ科)


初日カバー



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