東ドイツ Democratic Republic of Germany

ドイツがまだ東西に分裂していた1959年に東ドイツから自然保護を訴える5種の動物切手が発行されました。その中の1種がクジャクチョウを描いたものです。クジャクチョウは地味で小型の蝶が多いヨーロッパでは大型で美しい蝶として扱われており、ヨーロッパを中心に多くの国の蝶切手にとりあげられています。


1959.6.26 自然保護切手

クジャクチョウ
Inachis io
(タテハチョウ科)


西ドイツが4種のヨーロッパを代表する蝶を描いた青年福祉切手を1962年に発行しましたが、2年後の1964年初頭には東ドイツからもヨーロッパを代表する蝶を描いた5種の切手が発行されました。ヨーロッパアカタテハやキアゲハは数多くの国でとりあげられています。おそらくキアゲハを描いた切手が最多出場と思われます。


1964.1.15 蝶切手

ヨーロッパアカタテハ
Vanessa atalanta
(タテハチョウ科)
ミヤマウスバシロチョウ
Parnassius phoebus ♀
(アゲハチョウ科)
キアゲハ
Papilio machaon
(アゲハチョウ科)

ダイダイモンキチョウ
Colias croceus
(シロチョウ科)
ヨーロッパヒオドシチョウ
Nymphalis polychloros
(タテハチョウ科)


ところが面白いことに、西ドイツの切手と比較すると描かれている蝶がまったくダブっていないことに気付きます。西ドイツのアポロウスバシロチョウに対して東ドイツはミヤマウスバシロチョウ、コヒオドシに対してヨーロッパヒオドシチョウ、など近縁種は描かれているのですが同一種は避けています。やはり対抗意識のなせる業でしょうか。


1978.10.24 ドレスデン科学博物館250年

トンボジャコウアゲハ
Parides hahneli ♂♀
(アゲハチョウ科)


1978年にドレスデン自然科学博物館の250年を記念して、同館収蔵の時計、望遠鏡、化石、標本を描いた6種の切手が発行されました。その1種に同館自慢のトンボジャコウアゲハ♂♀の標本が描かれています。

トンボジャコウアゲハは南米に生息する非常に珍しい蝶で、マダラチョウ科の毒蝶トンボマダラそっくりに擬態しています。トンボマダラを描いた切手はボリビアから発行されたフトスジトンボマダラがあります。この種はちょっと太めなのでスマートなトンボジャコウアゲハとは少し体系が違いますが、多少雰囲気は分かると思いますので比較してみてください。



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