ブラジル Brazil

南米にはアマゾン川流域を中心に世界の蝶の約半分の1万種近くの蝶が棲息します。その中心にある広大な国家ブラジルからの蝶を描いた切手の発行は遅れました。最初の蝶切手が発行されたのは1971年でそれも2種だけと寂しいものでした。描かれている蝶は南米固有のモルフォチョウ1種と北アメリカから南米まで棲息するタスキアゲハが選ばれています。


1971.4.28 蝶切手

メネラウスモルフォ
Morpho menelaus ♂
(モルフォチョウ科)
タスキアゲハ
Papilio thoas
(アゲハチョウ科)


最初の蝶切手の発行から8年後の1979年にブラジルで開催された切手展BRAZILIANA'79を記念して4種の蝶切手が発行されました。この蝶切手はその図案と選ばれている蝶の種類から非常に興味深いシリーズになっています。まず図案ですが、蝶が葉にとまって翅をたたんでいるところを写実的に描いており、通常の図鑑的な蝶切手とは一線を画したものになっています。更に選ばれている蝶の種類ですが、4種とも南米固有の珍しい種類で各々特徴ある容姿を持つ種類になっています。

ジャノメチョウは普通は見映えのしない褐色の地味な蝶なのですが、アケボノスカシジャノメは翅が透明で後翅の部分がピンク色になっており、密林の中でこの部分だけが目立つため小鳥がそこをつつき、そのため後翅はボロボロになるのですが体は安全に逃れられるという仕掛けです。

シジミチョウ科のうちの樹林性のカラスシジミ類は二千種近く棲息しますが、その中でもクジャクシジミと呼ぶ一群の蝶はこの世のものとは思われぬほど豪華で美しい翅を持っています。地上で最も美しい動物の一種と言われています。


1979.8.1 BRAZILIANA'79

アケボノスカシジャノメ
Cithaerias aurora
(ジャノメチョウ科)
オオクジャクシジミ
Evenus regalis
(シジミチョウ科)
フクロウチョウの一種
Caligo brasiliensis
(フクロウチョウ科)
クリメナウラモジタテハ
Diaethria clymena
(タテハチョウ科)


フクロウチョウはその後翅の裏面にある目玉模様で外敵(主として小鳥)を脅すことで有名です。トリニダードトバコの蝶切手にもムラサキフクロウチョウが描かれていますが、後翅裏面の目玉模様を描いた切手は、1977年に赤道ギニアから発行されたプロメテウスフクロウチョウが最初と思われます(松永 豪さんに教えていただきました)。

タテハチョウ科のクリメナウラモジタテハも後翅裏面に数字の88が現れる面白い蝶です。これはディアエトリアという一群の蝶の特徴であり、88のほか、89や99の数字が現れます。これらの蝶を現地ではスペイン語で89を意味するオチエンタ・イ・ヌエベと呼んでいます。


1986年に3種の蝶切手が発行されました。セセリチョウ、タテハチョウ、シロチョウの3種です。いずれもあまり馴染みのない種類ばかりです。セセリチョウの一種は青い光沢色の美しい種類のようですが、世界に約3,000種いるセセリチョウ科の3分の2が南米に生息しており、地味な印象が強い日本のセセリチョウからは想像できない美しい種類が数多く見られます。


1986.6.5 蝶切手(自然保護)

セセリチョウの一種
Pyrrhopyge ruficauda
(セセリチョウ科)
ルリオビタテハの一種
Prepona eugenes
(タテハチョウ科)
シロチョウの一種
Pierriballia mandela
(シロチョウ科)



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